次世代病院構想(慶應義塾大学医学部,国立ガンセンターとの共同企画)

レントゲンやMRIといった医療機器を利用する患者は,自ら病院内を移動しなければならないことが多い.病院内で迷子になることは患者の不満の一つとなっているだけでなく,道案内に要する経済的な損失は無視できない額にのぼる.

次世代病院構想は,現状の病院の改善を具体化する情報技術の研究を推進しようとするプロジェクトである.前述の院内ナビゲーションのほか,心的待ち時間の短縮,個別のケア情報の提供,疾患によっては患者同士の匿名での交流など,情報技術が役立てる場面は少なくない.

本構想では,まず廊下の角や交差点,医局窓口等に超小型アンテナ局を設置し,電子化診察券(ポケットPC)を患者が所持することで利便性の向上を図る計画について議論をはじめようとしている.本システムを利用すれば,受信機に関連医療情報を提示したり患者呼び出しをしたりすることもできる.文字情報などは壁面に用意されたディスプレイに提示されるので,利用者からは「自分がいるときにはいつも自分の興味ある医療情報番組がなぜか流れている」ように見える.

このようなサービスは医療機器への誤動作の恐れがある携帯電話では実現できないし,そもそも強力な出力の送信機を身体に持ち歩くことも好ましくない.本システムは基本的に受信デバイスだけで構成し,必要に応じてBluetoothなどの微弱送信デバイスを利用する.サイバーアシストリサーチセンターの最終ターゲットでもあるマイボタン構想と共通のテクノロジを投入する予定である.  

(この件に関する問い合わせ先:yoshinov.yamamoto@aist.go.jp http://www.carc.aist.go.jp/~yoshinov/)

注:本ページは1999年の情報です.