本ページは,Stanford univ. APARCのvisiting fellowであるMr.Fukuokaの講演をもとに,筆者の理解する範囲をまとめたものである.本ページの公開を御許可くださったMr.Fukuokaに感謝する.(Mar.02)

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今後加筆する予定です.(23.Mar.02)

本ページでのベンチャーキャピタル

本ページでのベンチャーキャピタル(以下VC)とは「株式公開(IPO)を目指す創業期の未公開企業への投資」を指すこととする.また,米国を投資地域としているケースを取り扱う.投資分野としてはソフトウエア,通信,ビジネスサービス,ライフサイエンス,ヘスルケア分野を対象としたVCを前提とする.

VCにはいくつかの種類がある.狭義のプライベートエクイティ(バイアウト),ベンチャーリース,インキュベーションセンター等も未公開企業の株式取得を行なうのでVCに分類される場合がある.それぞれ,リスクの性質や投資手法はことなるらしい.

出資形態には,「優先株式」「ワラント」「転換社債」が一般的に用いられる.日本国内では,優先株式より普通株式取得のケースが多いらしい.また,転換社債はブリッジファイナンスとしてまたは業績が悪化した場合に用いられることが多く,一般的には優先株式取得とのことである.

優先株式とは?
http://www.nomura.co.jp/terms/ya-gyo/yuusenkb.html
転換社債とは?
http://www.nomura.co.jp/learn/firststep/cb.html

ベンチャー企業の成長ステージ

ベンチャー企業は,概ね次のような段階を経てIPOに到達する.

Seed
アイデア/開発スタート段階であり,出資形態は普通株.出資者は創業者自身であったり,友人であったりする.エンジェルと呼ばれる個人投資家はこの段階で資金援助を行なう./dd>
Series A
開発試作を進めている段階.有望そうなアイデアであると,VCが参入する.優先株の発行を行なう.
Series B
社内試作(α試作)が完成するレベルである.この段階で別のVCが参入する.優先株を発行.この段階までは「Start-up」と称される.売上はまだ発生しないことが多い.
Series C
客先評価版(β試作)が完成するレベルになると,さらに新しいVCが参入する.この時点で参入する投資家は,戦略パートナーであったり証券会社や機関投資家である.優先株を発行するが,場合によっては転換社債やワラントで出資する場合もある.この後,Series D, Series E...と段階を続ける会社もあり得る.
Mezzanine(Pre-IPO)
IPO直前の段階.ここでもまだ優先株を発行する場合がある.売上が計上されるようになっている.
IPO
大手の客先からの受注に成功するなどして,めでたく公開.出資者はもちろん一般投資家である.発行するのは普通株.また,これまで発行してきた優先株はすべて普通株に変換しなければならない.

例えばSeries Aで,1株あたり$0.4の優先株を何千株か発行したとしよう.このとき,概ね30%以下の発行数で普通株を発行できる.普通株は優先株の1/10の値段をつけることが多く,この例なら$0.04ということになる.VCとしては(自分のとり分が減るので)あまりたくさんの普通株を発行したくはないが,一般的には30%程度という相場感があるらしい.

Series B, Series C,...と,優先株を発行するたびに普通株も発行する.これがストックオプションとして利用される.というのは,優先株もすべて普通株になるIPOの時点で,たとえば株価が$40.0あったとすると,Series Aで発行した普通株の価値は1000倍になっていることになる.そういうわけで,創業者やエンジェルは巨額の報酬を得られる可能性があるのである.

どの段階で参入するか

Mr.Fukuokaによれば,技術の市場浸透は概ね5段階に分けられるという.

Technology Enthusiasts
ごくごく限られたマニア的な人々が,その技術を支持している段階.
Visionaries
ある種の展望を持った人々が,その将来性を評価している段階.
Pragmatists
はやりもの好きな人々が先を争って試そうとする段階.
Conservatives
保守的な人々でも,この技術は良いものだと認識している段階.
Skeptics
新しい技術に対してもっとも懐疑的な人々でも「あの技術は良いものだった」と認識している段階.この段階ではすでにその技術の市場は小さくなっており,技術としてのライフサイクルは終了している.

市場規模としては,Pragmatistsの段階とConservativesの段階のハザカイ期に最大になる.

では,VCはどの段階の技術に投資を行なうかといえば,VisionariesとPragmatistsの間に位置する技術に対して投資を行なうのである.そのため,信頼できるvisonariansや信頼できるpragmatistsの意見をよく聞くのだそうだ.

VCの収益

VCの報酬

VCは複数のファンドを運営していることが一般的で,そのファンドからの報酬が収益になっている.その報酬は固定報酬と成果報酬の二つがある.

固定報酬
ファンドの管理運営費としてファンド総額の2〜3%/年を受けとる.
成果報酬
キャピタルゲイン(投資元本回収後の投資収益)の20%を受けとる.

VCのファンドはVC自身のポケットマネーというわけではないのだから,まさにlow risk, high returnの世界である.それだけに,VCに対する信頼やブランドイメージは重要なものであるといえる.普通の場合,「ファンドを設立するから出資してくれ」といったところで出資金を集められないだろう.

VCのパフォーマンス

一般的には,運営するファンドの内部収益率(IRR)でパフォーマンスを評価する.

第一線のVCの,ここ10年間のIRRは平均25%〜30%といわれている.

有名なVC

ここシリコンバレーに私が来て以来,VCの話題が出た時にこの名前がでないことはなかったと思われるほど有名なVCは,Kleiner Perkins Caufield & Byers (通称KP)である.

彼らは設立以来,毎年自分たちの資産を倍にしているという.(彼らの成績は後日掲載したい.)しかも社員数は20名程度.こんな会社は他には見当たらないだろう.したがってKPに出資したいという人は門前市を成す.さらに,KPがSeries Aで投資を決定した会社に対しては,Series B以降の出資者の心配は一切不要になる.KPが投資していることが,なによりも確かな形でその企業の将来性を物語るからである.

VCの実務

VCは,リードインベスターとそれ以外の投資家に分けられる.

リードインベスターとは,ある特定の企業の投資計画の立案に際して中心的な立場となる投資家(投資会社)のことで,米国で一般的であるものの日本では一般的ではない.(そのため,日本では横並びの投資家が利害を対立させてしまったりするので不都合が生じることがある.)

リードインベスターの主な作業の流れは,次の通り.

  1. Due Diligence
  2. Term Sheetの作成・交渉
  3. 出資決定
  4. 契約書類作成・交渉
  5. 払い込み(closing)

一方,その他のインベスターは,リードインベスターの「出資決定」段階から参入する.

  1. Term Sheetの確認(& Due Diilgence)
  2. 出資決定
  3. 契約書類の確認
  4. 払い込み(closing)

Due Diligence

Due Diligenceには次の二つがある.

Business Due Diligence
企業価値の評価・決定と,投資の決定,投資金額の決定,持ち株比率の決定.
Legal Due Diligence
技術パテントの権利関係,ライセンス系約内容などの設定,従業員関係(ストックオプション,NDA)の設定,従来のファイナンスがある場合,既存投資家が有する権利内容の確認.

Term Sheet

Offering Terms(増資概要)

Terms of Preferred Stock(優先株の内容)

投資検討に際しての必要書類

投資先チェックポイント

人的リスク,技術リスク,市場リスク..(執筆中)

投資の実行と企業価値の評価

投資家が評価する企業価値 ≧ 新株発行価格がつける企業価値

PER (Price Earning Ratio)

PSR (Price Sales Ratio)

DCF (Discounted Cash Flow)

Pre-Money Valuation

Post-Money Valuation


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